鬼
ご
っ
こ
5
分
前
恋愛感情はないんですよ。
ただ伊だけがまともなだけでー
「今何て言った?」
イタリアは、はたと顔を正面に戻してドイツを見た。
いつものように小言を長々と聞かされ、退屈して窓の外の小鳥に目をやっていた彼は、それでもしっかり男の言葉を聞いていたらしい。
ドイツは暫し沈黙してイタリアの目を見つめた。イタリアが一歩、ドイツと距離を取ると彼は目を逸らさないまま口を開いた。
「お前の目を舐めてみたい」
「頭おかしくなった?」
イタリアが抑揚なく、しかしすっぱりと答えた。
困惑の色も嫌悪の色も浮かんでいない真顔のイタリアに、これはかなり引いているな、と傍らにいた日本は思った。
ドイツは至って正気だと言い、其れに反応するかわりにイタリアは黙ってまた一歩後退りをする。
いや、単なる興味なんだと続けたドイツの言葉に、イタリアは内心でそれはそうだろうと呟いた。
彼がそんな趣味ならば、友達なんてやってない。
いや、しかしそんな興味を素直にぶつけてくるのもどうなのだろう?
「そのまま舌で目をえぐり出しでもするつもり?」
今度ははっきりと嫌そうな顔をして呻いたイタリアに、見かねた日本が二人の間に入ろうとする。
彼の兄そっくりの顔つきで目を細めるイタリアを初めて見たからだ。
「まさか。ただ、甘そうだと思って」
ぴたり、と日本の歩みが止まったのが横目に見えて、イタリアは顔を覆いたくなった。
食に貪欲な彼が、何を考えたかを悟ったからだ。
「確かにイタリア君の目、キャラメルみたいな色をしてますね」
熱に浮かされたような呟きに、この場に味方がいないことを知らされる。
そして、彼は自分がこの場で最も非力なことも知っていた。
イタリアは威圧感を放つドイツとかつてない程に目を輝かせた日本を交互に見る。
駄目だ、本気だ。もうやだ、きもちわるい!ばかじゃないの!
イタリアは、しかしながら、逃げ足の速さだけはこの場で最も速いことも知っていたので、体を反転させながら、勢いよく地面を蹴った。
イタちゃんが二人に押さえ込まれるのが先か、
逃げきられて二人が諦めるのが先か…
(10.10.20ログ、11.03.21up)