をもてあました
帝国島国
のあそび



ほぼ会話






「私は貴方が嫌いだ」
「誰もそんなこと聞いてねえ」
「ええ。ですが、言っておかないと気持ち悪い」
「いいか、あくまで同盟はただの契約だからな」
「なんて鈍い方でしょう。だから気持ち悪いと言っているのに」
「二度言わなくたって分かる。断じてオトモダチじゃねえってことだろ?」
「ロシアさんを相手にしたあの戦いを契機に結んだ、ただの契約。それが私たちの同盟です」
「既にそれは世界に知れてる、まあ信じねえ奴もいたが」
「我慢ならないでしょう、皆さんに変な勘違いをされると」

「友達だと?」
「友達だと」

「とりあえず、んなこと言った奴は片っ端から殴ってるけど」
「どうして貴方はそんなに野蛮なんですか」
「変わらないだろ、お前だって」
「帝国だからと言って力に訴えるのがよしとは考えていませんよ」
「よく言うぜ…何人の屍の上に立ってるのか知れねえ」
「ええ、ええ。そうでしょうとも、生きている限り誰かを犠牲にする、それは誰しもに共通する理」
「利用できるもんは利用する、お前もそうしてきたし、俺もそうだ」
「だがしかし、もう少し理性的な個人であるべきだと私は言っているんです」
「少しも理性的じゃない解答だな、日本。俺達は個人じゃない」
「いや、これは失礼。私は貴方というお人が短絡的で野蛮だと言いたかっただけ」

「結構なことを言ってくれるな、さっきから野蛮だの何だの。俺から見りゃお前だってな」
「何ですか?」
「変わり者。世間知らずだし面白みもねえし、欧州を野蛮だと馬鹿にする割に欧州の真似をしたがるし」
「し、失礼な!貴方たちの真似などしていない!」
「いつぞやにお前の上司が造らせた…何つったか?あの建物はどこの国を見本にしたんだっけな」
「な、あれは開国したてで…外に馴染もうと上司が…」
「が、なかみが伴わない!マナーやら何やら、あの時はガッタガタだったなあ日本!なあ?」
「貴方ね…不平等な条約を私に押し付けていたことを棚に上げて」
「テーブルマナーの1つも知らない奴らに何故領事裁判権や関税に関する一切の権利を委ねられる?今はまだましだがな」
「なら、もういいでしょう。変に過去の話を蒸し返すのは止めろ」
「労力の無駄遣いってか?今思い出してもあの光景は笑えるぞ!」

「存じ上げてはいましたが、本当に貴方は根性がねじ曲がってますね」
「年中言われるほめ言葉だな、ねじ曲がるくらいじゃねえと勝ち残れねえよ」
「世の争いに?は、だから貴方は嫌いなんですよ。本当にたちが悪い」
「いいじゃねえか、俺みたいな奴がいても」



手にした湯呑みを傾けると冷え切った緑茶が舌に乗った。
風味は良いが後味が随分と渋い。茶を沸かしなおそう、もう彼とのやり取りにも飽きてきたところだし。

「もう止めましょう。疲れました。1人でやって下さいな」

私が息を吐くと、イギリスさんが口の端をつり上げて笑った。

「なんだ、もう遊びは終わりか?」

私は席を立ちながら、冷めてしまった茶を啜るイギリスさんを見下ろして言った。
緑茶の渋みと苦味には慣れたようだ。出会った当初は砂糖を探して卓袱台をじろじろ見ていた。
ふざけるな紅茶を出せだなんて暴れなくなっただけ成長したなあ、この人も。
しみじみと日本は思った。


「構いませんよ、私の負けで。終わりです。終わらせます。続きません」


それから台所に足を向けると後ろでガタンと音がする。イギリスさんが机に突っ伏した音だ。
ああああ、暇だなぁ、なあポチ。お前の主人は構ってくれねーんだと。
心底退屈そうに漏れた声にきゅわん、とぽち君が答えた。
かの大英帝国が暇なあまりに犬と会話!
思わず苦笑しつつも、湯を沸かす。かたかたかた、と冬の冷たい風が窓を揺らすのが聞こえた。













お前ら実は仲いいだろ…という帝国島国
なに遊びをしていたでしょう?
ヒント→祖国の「続きません」で終了。ん?んがついたら負け?
ぽち君は聖霊みたいなもんだと思ってます。死なないよきっと。



(10.11.18ログ、11.03.21up)