同じ目をしているから
同じ目をしているから(ナタとリヒ)
リヒ→スイス前提
「愛しているなら愛していると言えばいいのよ、何を恐れるの」
ナターリヤが言った。少女はその言葉を受けて俯いた。
「私は…妹ですから」
「私だって妹だ、それも血が繋がった。お前は違うだろう」
「血の繋がりなど無くても。お兄様にとっては、私は妹なのです」
何故、彼女に兄への恋心を悟られてしまったのだろう。
少女は上手く誤魔化せなかった先程の自分を恨んだ。
「それでいいのか?」
「いいんです。お傍にいられるだけで私はしあわせなのです」
「しあわせ?」
ナターリヤは少女の言葉を鼻で笑った。
少女が視線を向けると、ナターリヤは目を細めて、口の端を上げた。嘲るような笑みだった。
「嘘つき。しあわせなひとなんていない。満足してしまえばひとは死ぬんだ、知っていたか?
満足しそうになって、結局満足できないからさらに先を望む。本来ひとは満足しない。
絶対的なしあわせなどない、お前のそれは妥協だ。妥協になりきれていないが。
傍にいられるだけでいい?お前の目はそう言っていない」
「…………」
痛い。
少女は必死に取り繕っていた表情を無くした。
それから唇を噛みしめて目を伏せる。
じわじわとこみ上げてくる感情は声帯をふるわせることなく、眼球に膜を張っていく。ぽたり、こぼれ落ちた。
「だってお前はおんなの目をしている」
「…残酷なことを、おっしゃいますのね」
そう言って顔を覆った女の横を、もう一人の女は背筋を伸ばしてすり抜けていった。
傍にいられるだけでいい、なんて。傍にいることは条件の一つに過ぎない。
だって私は兄の全てが欲しい。
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