「「誕生日おめでとう!」」
「…………え?」
ぐつぐつ、炬燵机の真ん中には野菜や肉の入った鍋がいい香りを漂わせている。
炬燵机は二つぴったりと並んでいるので、鍋も三つに分けて置かれている。
鍋の周りには他にも様々な料理が並んでいて、やけに豪華だなあと思っていたのですが。
「たんじょ……あれ、今日何日ですか?」
「2月11日!もー日本ったら、やっぱりわかってなかったよー」
「せっかくだから、誕生日パーティでもやろうって俺が今朝言ったんだ!」
「今朝!?え、今朝って」
「俺がアメリカに連絡した後すぐ?」
「そうだよ!あのあとすぐね!」
「まだ日本と顔を合わせてすらしてなかったのに、いきなり電話でそう言われたときは驚いたけどな…」
「ま、こうやって日本の誕生日祝ってみるのもいいかなってすぐのったけどね」
「アメリカ君くらいだもんねー毎年毎年あんなに豪勢にパーティやるのー」
「そうでしたか、もう11日でしたか…」
「一応パーティだからさ、他にもいろんな料理作っちゃったよーあ、こいつはキッチンに近づけてないから安心してね」
「どういう意味だコラ!!」
「そのまんまの意味だよバーカ!」
「んだと!!?…あ、そういやプレゼントは今日用意できなかったんだけど…」
「あれ?君たち買い物に行ったじゃないか!」
「いやいや待て、スーパーマーケットで買えるか、ばか!時間もなかったし!」
「み、皆さん、お構いなく。私、こうしてパーティを開いて頂いただけでも十分…」
「腹減ったある!食べていいあるか!?」
「…………鍋はまだ駄目です。まだまだです。もう少し煮ないと味が染みません」
「これか鍋将軍…」
「でも、そうですね。お腹も空いたことですし…他の料理は頂きましょうか」
それから、私は七つの顔を見渡した。
「本当に……ありがとう、ございます」
「よーっし、酒持って来い酒ー」
「えっ、ちょっと…飲むんですか!!?」
「そりゃーパーティなんだから」
「ったく、しょうがねー奴らあるな」
「え、ええええ」
実はパーティというのは口実で、彼らは久々に騒ぎたかったのかもしれない。
ビールやらワインやらが次々開けられていく。お酒の入った宴会会場―我が家の居間ですが―は賑やかだ。
この調子では明日の朝、二日酔いに魘されながら何人か転がっていることだろう。
二日酔いの気持ち悪さをあまり刺激しないような朝食にしなければ、とぼんやり考える。
「まあ、たまには…」
「ヴェ、日本ー日本ー!飲んでるー?いっぱい飲んでねー!でもあまり飲みすぎないでねー」
「どうすればいいんですかそれ」
「日本は大丈夫だろう、うむ」
「はいはいドイツもー!飲んでも飲まれちゃ駄目だからねー!」
隣で魚を突っついていたイタリア君がドイツさんの背中を軽く叩く。
「あのねーケーキもあるんだよ!えっと、フランス兄ちゃんたちも買ってきてたみたいだけど、それとは別の」
「別の?」
「なーんとドイツの手作り!ねー!」
「な、おい!それは言うなと言っただろう」
「あっ、そうだった。まあいいじゃん!ドイツったら照れちゃってー」
「つつくなイタリア!」
「あたっ!…あ、とにかくドイツのは今日中に食べないと危ないかもなんだよー。
それに、そんなにおっきくないから皆で分けるとちょこっとになっちゃうんだ。だから、皆には内緒だからね。後でこっそり食べようねー」
「この分だと、フランスたちのケーキは明日に回されそうだしな」
「ふふ、それでは楽しみにしていましょうかね」
いろんな色と声に囲まれて、私はぱくりと鍋の豆腐を食んだのだった。
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