はっと目を開ける。 私は片手を差し出したまま固まっていた。
目の前にはあの湖が広がっている。


「きゃー!」

ばしゃんと水音がして、隣を見るとどういう訳か片足を湖に突っ込んだあの少女がいた。
そのまま、湖の方にずるずる滑っていくので慌てて差し出していた片手で彼女の腕を掴む、
が、小さなこの姿では少女を引き上げるだけの十分な力がない。
体がぐらりと傾ぐ。
私は派手な水音を立てて 、湖に少女もろとも落ちた。
そのまま引きずりこまれるように湖に沈んでいく。
口からごぼごぼと気泡が漏れ、肺の空気がどんどん失われていく。
それでも、何故か苦しくはない。
兎の少年はどうなったのか。私、友達になるって、言ったのに。

目を閉じて、離れないように少女の腕を力強く掴むと、少女は私の掴んだ腕に手を重ねた。
ふわり、と体が浮く。




「きくさん、ここはちょっと、ちがうみたいですね」



こんこんこん、とぷとぷとぷ。浮いているのに沈む。響く水の音。
水の中であるにも関わらず、はっきりと少女のは私の鼓膜を震わせた。