「長くなりますが、順番に聞いて下さいね。此処に戻ってこなくても、初めのお話からどんどん先に進めるようになっていますから、
それでも結構ですよ。あるいは、そちらの方が楽かもしれませんね」
「目が覚めたら、初めに少女と会いました。ええ、そうです。可愛らしい、少女でした。それから、兎とお喋りしました。
何故って、何故だったか…ああ、いやですね、年をとると物忘れが激しくて。その先が
――――ええと、そうそう、雪原で。寒かったんです。見渡す限り真っ白ですよ。
寒さに耐えかねて、ついつい先へと進んでしまいました。そうしますと、歌が聴こえてきます。
歌につられるように歩いていくと学校に辿りついたのです。
何人もの子供とすれ違いまして微笑ましくも思ったのですが、私は先を急がねばなりません。
ですから私は急いで歩を進めました。十字架の道を抜けて先へ、先へ。
目の前の扉を開けますと、慌ただしいオフィスに出ました。何の仕事をしてたのか?…さぁ…?
ともかく、書類の処理に追われる方々の間を通り抜けて、私は家へ帰りました。兄弟の待つ家へ。
けれど、なにか忘れているなあと思いまして。そうしたら、あの少女のことを思い出したんです。
ええ、初めに出会ったあの少女ですよ。すっかり忘れていました。
ああ、大変、大変。
私、少女に伝えなければならないことがあったのです。どうしても。どうしても。
全てが始まった、あの場所にまだ、子供は立っていました。子供はにこりとして言いました。
「おめでとう」――そうですそうです、私、この子にちゃんと返事をしていなかったんです。
初めに出会った時には返事が出来なかったから。私も微笑み返して、今度こそ答えました。」
「ありがとう、ございます」
「――ああ、私、 、です。」
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